☆引きこもりとカルト…ある現場の記憶より

だいぶ前の事…引きこもりの女性を娘に持つと言う母親である女性の依頼で、この方のお宅にお邪魔したところ「父親に了解を得ている」とこの女性はおろか当の娘さんの承諾さえ得る事なく、この娘である女性を教団に連れて行くと言う他宗を邪教呼ばわりする事で有名なカルト教団の面々と鉢合わせになったものです。

※父親である男性は完全に洗脳されており、死んだ魚の目の様な生気の無い目をしていました。

その昔、私が極道の世界に生きている頃などトラブルの解決や債権取り立てなどの集金の場面で訪れた先にヤクザが先客として待ち受けている事が多々あったものです。

こちらの要求する金額が「出来ましたので取りに来て頂けますか?」と電話の向こうで話す相手の声音一つで、こちらの要求をはねつける為に密かに対抗馬としてのヤクザを頼んだのか?それとも恐喝されていると警察にタレ込んだのか?直感に訴える様に分かってしまう時がありました。

家での警察沙汰は困るとの意識が相手に働く事もあってか、離れた場所にあるファミレスや喫茶店などを指定してくる場合もあり、第六感と言うのか虫の報せと言うべきか(笑)こちらの背中がひんやりゾクゾクする様な時は相手がサツタレ(警察へ通報・被害届け)している事も多かったもので…

これに対して少々大きな声を出しても周囲に漏れづらい事から、相手に付いた極道が会う場所に自宅を指定する様仕向けている場合などもあり、そんな時、その家の前には訪れるこちらを威圧し力を誇示するかの様にベンツやセルシオ(今はレクサス)が何台も止まり、運転手だけ乗せているだけの時もあれば、何人もの若い衆が乗っている様な時もあり、話の流れによってはいつでもケンカ上等とばかりに車の脇を通るこちらを睨み付け、好戦的な姿勢を見せつけている場合などもあったものです。

こんな時、玄関先に入り、並ぶ靴を見ただけで相手の貫禄も分かれば、組長と若い衆(組員)で来ているのか?それとも相手の組織の横の列(兄弟分など)の混成チームで来ているのか?までが言わずもがなで分かってしまう様な時がありました。

極道と言うもの…地獄の沙汰を話し合う時でさえも履き物は綺麗に揃えているもので、極道の世界特有の見栄と虚勢は、死んだ時に汚れた下着など履いていて笑われぬ様にと、日々着用する下着にまでそれは及んでいたものです(笑)

話しは冒頭に戻り…

この日訪れた御宅の玄関先に並ぶ履き物を見れば堅気のそれであり、乱雑に並んだ靴に相手のお里も知れた様な気がしたものです。
それでも私は玄関を入り「失礼します!お邪魔します!」と声をかけ、先導して家の中に入って行く奥さんに続いて行くと、中から「おっ、来た、来た!」と示し合わす様に小声で話す声が聞こえたものです。

二階家の一室に通されるとそこにはカルト教団2名に挟まれる様に座るこの家の主人、少し離れて泣きべそをかいて座っている成人間もない引きこもりの女性がおり、一応はお互い軽く会釈する程度の挨拶を済ましたところで相手が切り出してきました。

「こちらのご家族は私共の教団の信者さんでしてね、わざわざそれも真言宗の方に来てもらう必要はない事なんですがね…ところで奥さん、貴方の修行が足りないからこの様な事態になっているのが分かっているんですか!💢〇〇ちゃんは私共の方で引き取りますので、すぐにこちらのかたにはお引き取り願ってください!」と私の方を向いて話している様でありながら、私とは終始視線を合わす事なく、奥さんの方には怒気も顕な表情を向けるのでしたが…

すると一方に座っていた格闘技でもやっていそうな長身で年齢の若い人間がスクッと立ち上がり、台所の方に行ったと思うと、どこかへ電話している様子で「ハイッ、相手は『真言の坊主』一人で来ています。ハイッ、本部青年部の応援お願いします!すぐに到着ですね、ありがとうございます!」とこれみよがしにこちらに聞こえる様に話しているもので、それはこれから教団の人間か大挙してこの場におしかけるがどうするんだ?とこちらを暗に脅しているのであり…

その昔、極道渡世に生きた頃なども「タミウチ」と隠語で呼んだ他の組織の人間との「掛け合い」と呼ばれた交渉事に於いても若い頃などは年齢も上の恰幅の良いヤクザなどから、まるでこちらの根性を試されるかの様に「本部に電話しろ!」だの「若い衆に動員かけろ!」だの脅される事も間々あり、そこで怯んだ様子を少しでも見せれば、一気呵成に相手のペースで押し切られ、相手に何らかの名目で金を付けなければならない(支払う)事必定で、そうした評判は「悪事千里を走る」のたとえに同じでたちまち噂として広まり「腰の無いヤクザ」として評判の定着するところとなり、箸と茶碗(収入)にハネ返ってくる事から、喧嘩も辞せずの覚悟だけ定めて於いて、どういう理屈を付けてでも、相手の言葉尻を取ってでも(笑)劣勢をひっくり返す根性と機転が求められたそんな世界でもあった様な気がします。

そんな事を台所で「本部」に電話する若い人間の声に思い出しながら、以前なら「本部」などと言うワードに化学反応を起こして(笑)目の前の卓袱台をひっくり返して、部屋の隅にあったこの家の主人のものと思われるゴルフセットからゴルフクラブを抜き出して相手へ向けて振り下ろしていたであろう事などを思うと、自分自身も穏やかに坊主の性根になったものだと可笑しくもあったものですが…

カルト教団の面々、黙っている私が怖じ気づいたと思ったのか…?

「この際だ、教義についてお互いの意見を交わそうじゃありませんか?もっとも貴方に私を論破する事は出来ないでしょうが、ハハハ」

「真言宗の上人なんてろくなもんじゃない、真言宗の寺では長男が立たんと言うじゃありませんか?」

「いっそのこと我々の宗派に改宗されたらいかがですか?そうすれば今日の話しも丸くおさまる」等々…

私を挑発する様に言いたい放題を言っている様でありながら、目を見て物を言えぬこの人間、もう一名の私を威圧する様に立つ人間に「この通り真言の坊主を完膚なきまでに折伏してやったわ!」とポーズを決めたいだけで、その実この場をさっさと後にしたいのがこちらへ伝わってくる様で可笑しくもあったのですが、このカルト教団の人間が大きな声を出して母親である女性を睨み付けたあたりから当の本人である引きこもりの女性が小刻みに首を横に振り始め「ひゃっくり」を始めた事から精神的にパニック状態になっているものが見受けられ、話しの最中でもあり手をかざしてのヒーリングは出来ぬものの、目からでもヒーリングは入るもので、ヒーリングを意図してこの女性を見ていたものです。

※折伏(しゃくぶく)
仏教用語。衆生教化(しゅじょうきょうけ)の一方法。悪人・悪法を、威力をもってくじいて仏法に従わせること。

この女性のひゃっくりが収まったのとほぼ同時に、カルト教団の人間がまるで勝ち誇った様に奥さんには一瞥もくれずにこの家の主人である男性に「それでは〇〇さん、〇〇ちゃんをお迎えに来る日は改めてご連絡します」と一方的に言ったかと思うと部屋から退出しようとしたもので、ここで初めて私は…

「コラッ待たんかい!誰が帰っていい言うた!オイッ゛電話番゛さっき本部だか本家だか知らねえが、電話してたじゃねえか!青年部だか青年隊とかやらが来るんだろう?自分で呼んでおいて帰るとはどういう了見だコラッ!さっさと座れバカタレが!」と怒鳴りつけたもので、

するとリーダー格の男の方が「な、何ですか!?人をバカタレとは貴方それでも僧侶ですか?本当に本部に電話しますよ」と言い返してきたもので…

「何を寝言を言いやがる、僧侶だなんてよその宗派は邪教扱いでハナから認めるつもりもねえくせしやがって、笑かしたらあかんどオイッ、何だ!?今度は本当に本部に電話する言うならさっきのは何だ!『場面』で電話してやがったのかこの詐欺師野郎が!」

「何が教義について意見を交わすだ?真言の寺は長男が立たんなんてあんたらの宗派の上の人間の言うままに受け売りの時代錯誤の様な事言ってやがって、自分の宗派一門の外を出た考えを認める事など怖くて出来ねえんだろうがい、おどれらの考えじゃ、長男が立たない前に人が立たないんじゃないのか!違うのか?頭の中縛られて括られて、そんな人間と何の話が出来るんだオイッ!この子(引きこもりの女性)にあんたらの掲げる教典が何か効果を現しているのか?しっかり目を見て答えんかい!」と言うと、この家の主人である男性が「私は一命を賭して〇〇大上人の教えに帰依しております。家内が何を吹き込んだか知りませんがお引き取りください!」と私に言ってきたもので、それに対して私は…

「じゃかあしいわいコラッ!旦那さんよ、あんたもいい加減目を覚まさんとあかんぞ、何を信心しようと自由だけどな、このままじゃ「母屋」まで取られて済んでしまうぞ(終わる)どれだけコレら(カルトのメンバー)にアンタが上手に金を引き出されているのか奥さんはしっかりチェックしていて訴訟になっても闘える様に弁護士に相談しているの旦那さん知らんのだろ?それにこの上娘さんまで連れて行く様であれ営利誘拐ですぐ告訴する段取りです」。

すると、今まで黙って聞いていた引きこもりの娘さんが「お父さん、私が引きこもりじゃいけないの?落ちこぼれの引きこもりじゃお父さんの娘じゃないの?私はこの人達が家に来る度に頭が割れる様に痛くて死にそうだったんだから…」と言った後泣き出してしまったもので、後でこの女性の母親から聞いたところによると、これだけキッパリと自分の意思表示をしたのは子供の時以来10年ぶりだったそうです。

この時にはカルトのメンバーもこの家のご主人もすっかり顔色を無くしていたもので「私達はこれで失礼します」と、そそくさと退散しようとするカルトのメンバーの背中に「これ以上娘さんに障るならいつでもくるぞ!」と言葉を投げつけたものでしたが…「チョ、チョット〇〇さん待ってください!」とカルトのメンバーを追って家を出て行ってしまうこの家の主人の姿がこの家の現在の有り様を物語っているかの様でもありました。

私にしても現在は僧侶でありヒーラー、争いの渦中に身を投じる様な事は避け、司法に委ねる領域と言うものは自身の中でも明確なものもあります。ただ、私のブログを読んだと言う母親に連れられてきたこの引きこもりの娘さんの話を聞く内に、教団本部とか施設でこの女性をサポートするのではなく、自分の経営する何かの部品の組み立て工場で外国の労働者と共に安い賃金で使おうとするカルト側の魂胆がみえみえであり、貯金を全部吐き出し、家の権利証までをカルトのメンバーに渡しかねないこの父親が家族の絆と言う「母屋」までを侵奪されかねないものを嗅ぎ取る様に感じた私は番外セッションとして、『当て馬』の様なやくどころをお引き受けしたのでした。

カルト教団のメンバーとこの家の主人である男性が出て行った後で母親である女性が「あの…娘が、正仙さんに部屋を見てもらいたいと言ってるのですが…」と言うので、母親に付いて娘さんの部屋に行くとよく整理整頓された部屋で娘さんが待っており、本棚の方を指差すのでした。
そこには「シルバーバーチの霊訓」などのスピリチュアル関連の書籍や瞑想に関する本やこの女性が得意とする切り絵工芸に関する本がびっしりと並び、この女性の豊かな内面世界を垣間見た様な気がしたものです。

この家を辞して駅までの道のりを母親である女性が送ってくださったものですが歩く道すがら「娘のサポートを今後もお願い出来ないでしょうか?」と言うのでしたが…
「それをしたらカルトの人間に私が取って代わるだけで娘さんにとってちっとも風通しの良い話しじゃありませんね。それに娘さんに恒常的なサポートとか必要ですか?お母さんが知らないだけで娘さんは豊かな内面世界持っていますよ。伸び伸びと自由にさせたら良いと思います。本人がセッションを受けたいと言うならインナーチャイルドの癒しをする様な優しく寄り添ってくれる女性ヒーラーやセラピストの方が良いと思います。でも旦那さんはしっかり縛られているから離脱にはまだまだ時間がかかりますね」と答えた私でした。

子は鎹(かすがい)とはよく言われる言葉ですが、子供に問題がある様でありながら、真実を失った夫婦を揺さぶり時には別離へとシフトさせる役割を子供が担っている場合もあるもので…

その後しばらくしてこの女性より、夫はカルト教団に相変わらずの入れ込み様で、意を決して子供を連れて離婚したとの連絡が入ったものです。

                          

                                                                                                 合掌

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