花の写真から

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人が臨終の際にある時、一時回復するかの様に小康状態を取り戻し、しっかりとした物言いで、見守る周囲の方を驚かせる時があります。

そんな時、死を目の前にした方の口から『綺麗な花畑を見てきたよ』と言う感想を聞いた時があったり、親しい人の亡くなる様子に聞いた時がある方もいるのではないでしょうか?

亡くなる間際と言うのは、肉体を離れ、幽界(アストラル界)とこちらを行ったり来たりと言う事もある様で、そんな時、共通の体験として花畑を見ると言う事がある様です。

私なども父をガンで亡くしましたが、初めの手術より数年を経て再発し、身体を切り刻むかの様に手術を繰り返す様子を見て気の毒に思ったものです。

でも、今思えば手術を繰り返し、体力を失って行くプロセスさえも、生への我執を緩やかに手放す意味において、父にとって必要な事だったのではないかと思ったりもします。

父が意識混濁になる直前、病室に私一人だけの時がありました。
目を開けた父は何を思ったのか?身体を起こしベッドの上に端座したものです。

『さあ…俺もこれまで、向こうへ逝く時が来た様だ…』と語り始めた父の言葉、父の姿と言うもの、その当時は私も極道社会の人間で、スピリチュアルな心得など全くありませんでしたが、まるで、今しがた黄泉を垣間見て帰ってきたかの様な、すべての執着を手放した凛とした父の姿に、後光が射している様に思えたものです。

酒乱だった父には苦労させられた母でした。
子供の頃など、出刃を持って追ってくる父から母と共に逃げ、近所の方にかくまってもらった思い出のある私にとって、父は憎い疎ましい存在だったのかも知れません。

また父にしても、酒乱ではあっても、遊びの一つも知らず、屑商にタクシーの運転手を兼業し、仕事一辺倒の真面目人間でもあり、中学の頃からグレて、挙げ句の果ては裏社会に飛び込んだ私を容認できるはずもなかったのです。

鑑別所から学園、少年院と、十代の頃など、実家など寄りつきもしなかった私ですが、私の影響からかグレかかった妹が心配で、フラリと親の元を訪ねる時がありました。

そんな時も、酒に酔って『お前何しに帰ってきやがった!』とからんでくる父とと掴みあいの喧嘩になり、さすがに親でもあり、手加減して殴ったつもりが、顔面にヒットしてしまい、後日になって、父の歯が揺らぎ抜けてしまったそうで…

しかしながら父は後日になって『あの馬鹿野郎…親に手をかけるとはとんでもない野郎だ…』などと言いながらも、その抜けた歯を大切に持っていたそうです。

まるで何かの記念の様に…

父が亡くなってしばらくしてより、母から父の遺書とも思える走り書きの様なメモを見せられた時がありました。

身体を切り刻まれこれも運命かな…

運命かな…

楽しかったよ、愛していたよ、今までありがとう。

と、随分と前の事ゆえ、文章は正確には覚えていませんが、それは母に宛てたものでありました。

東北の寒村から蒸気機関車に乗って集団就職で東京にやってきた父でした。
今とは違い、地方の人間だった父にとって、都会で生きる事は冷たくそびえ立つ壁の様な厳しさやプレッシャーを感じていたに違いありません。

だからと言って、母が負った苦労と言うものが割り引かれる訳ではありませんが、父の中で東京の人間に負けたくない、家族を守り、マイホームの一軒も持ちたいと願う懸命さが、頑なまでにあった様な気がします。

父方の祖父には子供の頃、可愛がられた私ですが、この祖父にしても若い頃は絵に描いた様な短気、髪を掴み引きずり回すなど、祖母に対しての暴力は日常茶飯事だった様で、それを幼い頃より見て育った父が、家長の姿はこうあるべきと…
自らに刷り込んで行ったとしても不思議はありません。

私にしても極道当時、籍を入れた女性に対し、やはり短気の果てに手を上げた事もあったのです。
母に暴力を振るう父を憎む思いがありながら、知らずの内に同じ跌を踏んでいたのです。

人間とは、憎み抗う事こそ自らに取り込んでしまう生き物なのかも知れません。

父の晩年の最後まで苦労させられた母でもありましたが、その傍らで、父の弱さや寂しさを実に見抜いていた人でもあった様な気がします。
添い遂げる事の美しさと言うもの、あわなければさっさと別れてお互いの道を歩むが良しとばかりの今時の風潮には流行らない言葉かも知れませんが、母の姿にそれを見る様な気がします。

まさに母は強しと言う言葉そのままかも知れません。(笑)

私も人の痛みがわかる様になり、父が抱えていたであろう弱さと言うものを自分の中に見いだす事が出来る様になった時、もう父は鬼籍に入った後でした。

一期一会と言う言葉、外の世界を生きる為の心得としてばかりでなく、日常共にいる、夫婦、親や兄弟、子供すべてに照らして頂きたいと思います。

家族の風景をいついつまでも大切に…

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合掌

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