映画『最初に父が殺された』を観て

私は右翼団体に所属していた十代の頃など、軍歌もボリュームいっぱいな街宣車に乗り、共産主義撲滅など民族派、右翼団体としてのイデオロギーや主義主張に沿ったアジ演説をマイクを通して行っていたものです。
(現在は特に政治思想などはありません)
そんな中で、演説用に手渡された原稿には当時ソ連(ロシア)や中国、そしてこの映画の舞台でもあるカンボジアで行われた共産主義勢力による虐殺の実態なども書かれていたもので、この映画を観ている内に当時暗記の上マイクで演説していた内容がなぞる様に思い出されたものです。
アンジェリーナ・ジョリーが監督・脚本・製作を手がけたこの映画(Netflixで2017年9月より配信)1975年に実権を掌握したポル・ポト派率いるクメール・ルージュ支配下のカンボジアに於いて、過酷な少女時代を過ごした実在の女性、ルオン・ウンの回想録『最初に父が殺された 飢餓と虐殺の恐怖を越えて』を映画化したものですが、極端な共産主義思想のもと都市に住む住民達を農村に強制移住させ、病気や餓死を含め人口の2~3割にあたる約170万人以上が犠牲になったと言われる強制労働や拷問、虐殺の実態と言うものが、当時まだ5才だったルオン・ウンの視点で描かれているものです。
内戦下のプノンペンで政府高官の父を持ち、お手伝いさんもいる様な裕福な家庭の子供だったルオンでしたが、反米を掲げ街に進撃してきたオンカー(クメール・ルージュ)は住民達に『同志よ』と呼びかけながらも、米軍が爆撃してくるからと身の回りの荷物を持ち住居を立ち退く様に強要し、オンカー支配下の農村で強制労働に司しめる為にひたすら追い立てる様に歩かせたもので、途中、田畑で『僧侶など役立たずの寄生虫だ💢』と奴隷の様に使役される僧侶の姿などもあり、検閲所なども設けられ、役人や資産家、軍人などは処刑する為に選り分けられており、
政府の役人と分かれば処刑される為に身分を偽るルオンの父親でしたが、オンカーに車や時計なども精神を堕落させるものとして強制的に奪われ、赤いルオンの服も焼かれてしまい、身を寄せた親戚の家でも、床の隙間から役人(父親)を匿ったと分かれば皆殺しにされると叔父と叔母か話しているのを目撃するルオン、優しい両親に育てられ厳しく叱責一つ受けた事の無い少女が、当初は意味が分からぬその残酷さを追認する様に理解して行くその様が、戦争や暴力の不条理をまざまざと伝えているかの様でもありました。
その後もオンカー支配下の食事もまともに与えられない過酷な強制労働で何の治療を受ける事もなく糞尿まみれで死ぬ姉の姿、まだ幼い兄や姉へのオンカーの暴力や不当な虐待、周囲の密告を怖れながらも子供の空腹を満たす為に人目を憚る様に虫を焼いて子供に食べさせる父親の姿、その父親も身分がバレたのか?『橋の修理を手伝え』との口実で迎えに来たオンカーを前に、突如訪れた残酷な別れに泣き崩れる妻を抱き止め、処刑される事を子供に悟られぬ様『子供に泣いた顔を見せるな』と諭した上で、自らの胸に子供の姿を刻み付けるかの様に子供の頭に手を置いてオンカーに連れて行かれる父親の背中に『お父さん帰ってきてよ~』と叫ぶルオンの姿が何とも痛ましく哀れに映ったものです。
親を処刑し殺せば家族に復讐される怖れもある事から家族を皆殺しにする傾向もあったオンカーであり、そうした事から母親は子供達の未来を考え、極限状況下で苦渋の決断をするもので、家族が皆で写る写真や父親の形見分けを子供達に行った上で、農村から別々の方角に脱出し孤児を装って生きろと、これも今生の別れとなる事を覚悟で叱責する様に躊躇する子供達を追い立てたものでしたが、この母親の決断のおかげで結果としてルオンや兄、姉も生き延びる事になったもので、子供を逃がせば当然オンカーに不審を招き拷問され揚げ句の果ては殺される事など火を見るより明らかな事であり、極限状況に置かれた親の姿、子供に示すもの、絆、真の愛情に至るまでまざまざと感じさせるものがありました。
その後は再びオンカーのベースキャンプの様な場所に姉妹でたどり着き収容され、動作が機敏だと兵士としての洗脳教育さえ受けるルオン、銃の扱いから地雷の設置に至るまで、小さな少女が傭兵もどきの生活を送る様になり、この段に至っては子供ながら生きんが為に毒をも喰らう逞しささえ見せる様になったもので、大きなクモを焼いて食べたりとサバイバルを生きる描写などにもそれが現れているかの様でもありました。
その後、ベトナム軍の攻撃を受け脱出するルオンでしたが、やがてベトナム軍に保護され、そこを逆にオンカーに襲撃され逃げるものでしたが、森林に迷い込み、次から次へと地雷を踏み死んで行く兵士を目の当たりにし、そこがかつて自分がいくつもの地雷を敷設した場所である事に気付き、忍び足、差し足で歩くルオンの姿に、幼気な少女にはあまりにも過酷すぎる戦争の狂気が覆い被さるかの様でもあり、この映画の脚本にも参加していたと言うルオン・ウン本人の実体験あればこその場面や描写を至るところに感じさせるものがあり、
最後は生き残った兄や姉と再会する場面などホロリとさせるものもありましたが、カンボジアで人道支援や子供に対する慈善活動に開眼したと言うアンジェリーナ・ジョリーならではの視点を感じさせるとても良い映画でした。
Netflixよりご覧になれます。
合掌

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密教僧侶ヒーラー正仙
元ヤクザ組長から密教僧侶ヒーラーになった男
真言宗・大元吉祥堂・堂主・ヒーリングルーム吉祥・主宰

かつて極道の世界に身を投じていたが、獄中にて
スピリチュアルな気付きが始まり、出所後堅気になり、
その後真言宗僧侶と成る。

あたり前に生きる事が難しい今の時代、
自らを不安や恐れと言う闇の中に囲い苦しんでいる方達に
それぞれの方が本来持つ、
あるがままの素晴らしい光や輝きに気付いて貰える様に

愛を基にしたパワフルなヒーリングやリーディング、
講演を心掛けて行きたいと思っています。

 

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