ナチスドイツによるホロコーストを逃れる為、東欧の国の何処か(国が分からない)叔母の住む家に疎開していた年齢で言えば小学校高学年位の少年が、叔母が死んだ事から放浪の旅に出て体験する不条理、迫害、暴力など受難の数々が描かれた反戦映画でもありますが、子供の眼を通して写し出される剥き出しで容赦なき人間のエゴ、心の闇、極限状況下で見せる人間の良心など、単に反戦映画と言うばかりでなく、私達人間が子供から大人になるにつれ失いゆく何物かを映し出している映画の様にも思えたものです。
叩かれ殴られ、時には村人から肥溜めに投げ込まれ、親切を装い一時庇護者となってくれた大人からは性の玩具(男女共に)同様の扱いも受け、やがて大人に復讐する事を覚えたこの少年、旅の途中で出会ったロシア兵からは『忘れるな、目には目を歯には歯をだ』と教え込まれ、渡された拳銃と共に報復の信念を強化するもので、生きんが為には人を殺す事も厭わない人間へと成長するのでしたが、そんな事はつゆも知らず離れて暮らした事を詫びる父親との再会に戸惑いと反発、やがて緩やかに受け入れる子供の表情がクローズアップされたところでのエンディングでした。残酷で不条理な場面も多い為かクランクインされた時など途中退場者も続出したと言うこの映画、最後まで観ていた人がスタンディングオベーションしたと言うのは、少し違うなと思いつつも(笑)
暴走するエゴが、人間や村全体、田舎の教会に至るまでを席巻し支配する狂気と言うものが見事に描かれており、それは現在のご時世、とかく横行する同調圧力の先にあるものさえ映し出しているかの様でもありました。
アマゾンプライムの他YouTube(有料)などでも視聴出来ます。
合掌