桜散る頃…神の一瞥!

今日はとても気持ちの良いお天気で、日中は愛犬チビを連れて隅田川沿いの遊歩道を散歩しました。

東京は花見のシーズンも終わり、桜の花もすっかり落ち、新緑のそれに変わっています。
桜

花の落ちた桜の木を見ながら私は思い出していた事がありました。

それは私が極道の世界から足を洗い数年が経った時の事…

ある年長の方とお会いし話す機会がありました。

その方も過去に長年ヤクザの社会に身を置き、何度となく刑務所に服役された経験のある方で…

若き日に刑務所に服役した際に、刑務所の庭に桜の苗木を植樹する作業をされた事があったそうです。

桜を植えた時にこの方は、『花は桜木人は武士』という言葉がある様に、刑務所の塀の上で踊りを踊る様な自らの刹那的な生き方に…

いざ抗争ともなれば、先頭に立ちいつ死んでも良しと…その時には桜の花の様に潔く散りたいものだと思ったそうです。

それから30年近くの時を経て、事件を起こし、再びその刑務所に収監され…

刑務所内での受刑者同士の派閥争いに巻き込まれ、独房(受刑者が入る一人部屋)に入れられたそうです。

独房の鉄格子から何気なく表をみると、目に映るは小春日和に綺麗に咲く、桜の花…

それは忘れもしない…若き日に自分が土を掘り植えたその桜だったのです。

その当時とは見違える様な太い幹、逞しく空に向かって伸びた枝振り、そして満面の笑みを浮かべる様に咲くその桜を見た時…

塞きを切った様に涙が溢れてきたと言います。

何の恐れも制限もなく、自らの種子を咲かせる事だけに懸命で純粋な桜の花…

振り返る時、若き日に、桜を植える時に誓った、桜の様に清く潔くとはほど遠い己の人生…

力の世界が全てと…自分が信じ飛び込んだ世界、若い内、力に溢れている時は疑う事なく、ヤクザ世界の信念や掟に従い生きていた己…

しかし…その結果といえば、家族や友人など多くの方に迷惑や計り知れぬ心労をかけ、多くの…本当に多くの人間関係の破綻を経験し…

組長とは名ばかり、ついぞ今だに心の安息を得られずに、独房の壁を見つめるばかりの自分…

そうした思いが、今までフタをして聞こえないフリをしていた深い感情が…

自分が植えた桜の木を見た瞬間に、ドット溢れ出てきたと言います。

そしてその桜がまるで自分に…「長い間待っていたよ…」と語りかけてきた様な不思議な感覚さえあったそうです。

そしてこの方は、これを機に堅気になる事を決意したそうです。

出所後は文字通り、ゼロからの出発、五十代後半からの人生の再スタートを切ったのです。

私がお会いした時には、新しい家族に囲まれて本当に幸せそうでもあり…

ただただ…笑い皺だけが目立つ優しい父親の姿がそこにはあるばかりでした。

この方に…桜の木を通して『神』が語りかけてきたメッセージとは思えないでしょうか?

神のいる場所は…お寺や神社やパワースポットばかりではないとは思いませんか?

密度の濃い薄いはあっても、私達のいる場所全てに…

そして何よりも私達の内側に…

神はその美しい光りを宿しているのではないでしょうか…

その人の人生そのものに…

他者を慈しむその優しさにも…

神はいつも寄り添っているに違いありません。

かく言う私も、人生の蹉跌の時期、獄中の独房にて、神に揺さぶりをかけられたそんな一人でもあります。

合掌

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