あるニュースを見て・元極道の雑感、私記

 

私が裏社会から抜け出て行く上でその世界に借金が無かった事は恵まれていたに違いありません。
ヤクザの世界から足を洗い堅気になるのに指を詰めれば済むと思っている人は多いに違いありませんが、それも金額によりけりで、大きな金額ともなれば所属する組なり一家から『堅気になりたきゃ指など要らぬから金を置いて行け、分かっているよなお前?』と話しを切り替えられ、ぐうの音も出なくなるのが分かっている事から、堅気になる事などあり得ない選択と自らに言い聞かせ、さらに借金を重ね、周囲を喰い潰し(金の無心など)組費(上納金)も滞納したり借金でまかなったりと、組長とは名ばかりの借金まみれで、自ずとやり手の人間には頭が上がらず、幻の堅気の日を夢見ながら死んで行く人間も今の時代多いに違いないのです。
極道当時、自分の事務所を出すにしても組織の世話を受ける事は違うものを感じていた私でした。たとえプレハブ一つの掘っ立て小屋でも極道にとって事務所は武士の出城に等しく、たとえ恐喝をかまそうと八つ当たりをかましてどこからか金を捻出しようとも我の器量で持つものと思っていたものです。
組織の世話になっておけと親切な言葉をかけてくれる人間でさえ、そんな言葉に甘えた日には裏で『所詮、組の金で建てた事務所じゃねえか』と、一人前の極道として認めない厳しい眺め方をされる世界であり、ホクホクと組や組織はこの様にバックアップしてくれるとそんな事にあぐらをかいて喜んでいる様では、『こいつの性根はサラリーマンだな』と見透かされてしまうものもあった様な気がします。
たとえば、ヤクザだって母親のお腹を痛めて生まれてきた人間であり、実の親の死に直面する事は当然あるもので、そんな時の所作一つでも見え隠れするものがあったものです。親が死んだと組の話に掛け、盛大な葬儀を出して貰う(今の時代到底無理)人間もいれば、極道渡世には関係の無い肉親の事でもあり、組には黙って密葬で済ましてしまう人間などもいたもので、前者の場合、『ヤクザと関係の無い親の死に目まで使って香典集めかい、あいつは根っからの商売人だ!』と後々、揶揄され皮肉な見方をされる事が多いのに対し、
後者の場合、親が死んだ事から葬儀を済ませた事などが後になって知れ渡り『何で言わんかったんや水臭いのう』などと上の人間から言葉をかけられても、かえってそのストイックな姿勢がヤクザとして評価される所以となったりするそんな世界でもありました。
極道は没個性、究極の宮仕えの世界なれど、せめて金で首輪を付けられた飼い犬にはなるまいと、常住坐臥、日々、心理戦の真っ只中に放り込まれるが如く生きた当時を、あるニュースから思い出した愚僧であります。
合掌

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密教僧侶ヒーラー正仙
元ヤクザ組長から密教僧侶ヒーラーになった男
真言宗・大元吉祥堂・堂主・ヒーリングルーム吉祥・主宰

かつて極道の世界に身を投じていたが、獄中にて
スピリチュアルな気付きが始まり、出所後堅気になり、
その後真言宗僧侶と成る。

あたり前に生きる事が難しい今の時代、
自らを不安や恐れと言う闇の中に囲い苦しんでいる方達に
それぞれの方が本来持つ、
あるがままの素晴らしい光や輝きに気付いて貰える様に

愛を基にしたパワフルなヒーリングやリーディング、
講演を心掛けて行きたいと思っています。

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