一期一会…アウトレイジなお茶の心得

※社会通念上不適切な表現や描写がある事をお許し頂きたいと思います。
日産ゴーン会長の逮捕の事などをある方と話していたものですが、日産の執行部よりも行く先々で嫌味を言われたり、特に企業倫理を尊ぶ法人の顧客を担当している営業マンなどは本当に大変だろうなと思うばかりなのですが「あんな状況じゃ、行った先で出されたお茶に手をつける事さえ出来ませんよね」と言う言葉に、ふと、昔いた世界でのお茶の習いを思い出した私でした。
過去には極道の世界に生きた私はまだ駆け出しの頃、その道の先輩から言われたものです。
「ええか…相手の事務所で茶を出されても、話しが終わるまで手をつけたらあかんへんのやぞ」と…
これは掛け合いと呼ばれる極道同士の交渉時など、対立する相手組織の事務所を訪れた際のひとつの心得でもありました。
時には生き馬の目ん玉を引っこ抜く様な揚げ足の取り合いになる極道の話しと言うもの「言った言わぬ」から始まり、こちらの吐いた言葉が目の前に座る相手ばかりでなくその人間の兄貴分や親分を愚弄している、または相手の一家や組そのものを侮辱していると、こちらの揚げ足を取りヤマを返してくる事も話の上でままある事でもあり…
※ヤマを返す(言葉で攻撃してくる事)
そんな相手の言葉に素直に頭を下げていた日には指が何本あっても足りない事から(笑)揚げ足取りの応酬になるものですが、組織間に及ぶ力関係なども話の趨勢に大きく影響はするものの、胆のある無しは言葉の端々に滲み出るもので、組織を背景にそれこそヤクザ映画調に(笑)カマシを入れてくる相手にも動じる事なく道理の通った話で打ち負かしてしまう見事な人間もいたものです。
こうした人間と言うのは数に頼んで半死半生の目に合わせたところで決して「ゴメンナサイ、スミマセン」を言わぬであろうその世界に生きる人間特有の自尊とも凄みとも言える雰囲気が滲み出ているものがあり、またそれを裏付ける武勇伝もあったりで、中途半端に帰せば、かえって返し(報復)を招く事が予想され、結局有利に進むはずの話しも形成逆転されてしまい、六分4分など利のある話で押しきられてしまうと言うのも胆力の差が結果に現れる一つの形でもありました。
勿論、話の上では面子、実利共に勝ちを収めた方でも多少は相手の面目を立て「逃げ道を作ってやる」事も時に大事であり、こうしたその場、そのケースに応じた立て引きと言うものがあり、こうした事も場数を踏むと頭で考えるよりも身体で覚えて行く様になるものでした。相手が弱いと見てとことん追い込んだばかりに「窮鼠猫を噛む」の諺の如く、捨て身の逆襲に遭い惨劇に至るのもその世界であり「あまり負けた気にさせず勝ちを収める」器量も時に問われる極道の世界だった様な気がします。
話の冒頭「出された茶に手をつけたらあかへんのやぞ」とは、そんな凌ぎを削る場面で出されたお茶に手をつける事により、相手に借りをつくり話しのリードを許すなかれと言う…
心理戦を戦い抜く上でひとつの自分を戒める教えとしてのそれがあった様な気がします。
話しを終えてすっかりぬるくなったお茶を飲む事も幾度か…
怖い時がなかったと言えば嘘になりますが…笑
でも、そんな場数を踏む事により獣の感とでも言うべき第六感や、人の心の動きを読み取る繊細な感性も私自身研ぎ澄まされて行ったのかも知れません。
そんな私も今では僧侶、何処へ行ってもお茶を出されれば「ありがとうございます」とニコリと合掌して頂くばかりであります。
ついでに出されたおまんじゅうなども遠慮なくパクリと…(笑)
                       
                                                                                                    合掌
  
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