★人生交差点…獄中で聞いたaikoの歌

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お正月にTVをつけるとaikoの歌声が流れていました。この「ボーイフレンド」と言う歌が流行っていたミレニアムの頃、皆さんは何をされていたのでしょうか?

aiko ボーイフレンド
https://www.youtube.com/watch?v=96c3LlcIIKs

歌と言うものはその時々の記憶を連れてくるものです。

「あ~テトラポットのぼって~」とaikoの歌うポップなリズムが、拘置所の独房に備え付けられたスピーカーから流れる時、色彩に乏しく、すえた匂いのする獄舎には場違いな音楽の様に思えたもので…「ああ…テトラポットのぼってかいな…」と独房の窓から見えるテトラポットと同じコンクリ色をした塀を見ながら、そのアップテンポな歌詞をやくざな溜め息に代えた私でもありました。

この時私は極道として最後の事件で収監されていたのでした。
極道当時と言うのは、一時の快楽はあっても、いつも祭りの後の寂しさの様な感覚がつきまとい、若い衆に囲まれ、綺麗な女性を脇に置いて酒でも飲んでいれば意気揚々と天下でも取った様な気持ちにもなったものですが…

深酒し寝ている時にハッと目を覚まし、横で寝ている当時妻だった女性や寝息を立ててスヤスヤと寝むる幼い娘の寝顔を見ていると、ヤクザだ極道だと突っ張ってみたところで、明日には警察に踏み込まれて、こんな家族の絆など、いとも簡単に踏みにじられてしまう事を想うと、その寝入る家族の姿が、消えてしまうかりそめの幻の様にさえ思え、強い無常感に襲われたものです。

そんな小さな娘が母親に連れられて私のいる拘置所に面会に来た時がありました。「パパ、何でこんなところにいるの?ねえ、ねえ、だっこしてよ」と、面会人と未決囚を隔てる透明なプラスチックの仕切りの向こうで突き出した娘の紅葉の葉の様な小さな手を今でも鮮やかに思い出す事が出来ます。

私は判決がおりて下獄するまでの間過ごした一年に及ぶ拘置所の独房で「神との対話」と言う本を読んだ事からスピリチュアルな真理に開眼し、予知夢としか思えぬリアルで不思議な夢を毎日の様に見る様になり、死んだ父親が枕元に立ち無数の仏像に金箔を塗りながら私に語りかけてきたりと、霊的な目覚めとでも言うべき体験をしたもので、この独房の日々が現在の私のスピリチュアルな活動の起点となっている事に間違いありません。

鉄格子の錆の匂いがした独房…そんな流転の日々を愚僧に思い出させたaikoの明るい歌声でした。

合掌

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