『倍返し』と言う流行りの言葉から…

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世間では半沢直樹の『倍返し』と言うワードが流行しているそうです。

倍返し…

まだバブルの余韻が残り香の様にある頃、地面師と呼ばれる不動産や土地に関する詐欺師が、ヤクザの親分から金を騙し取ろうとする時によく用いたのがこの倍返しと言う言葉でした。

たとえば…『組長、〇〇の物件の手付金1千万円を今私に出しておいてくれたら、私の先に買手がいますから、すぐに売買契約させて、倍返しさせてもらいますので、金を出しておいてもらえませんか?すぐ返しますので…。』と話しを向けてくるのです。

当時の、土地や物件に群がる詐欺師達が最も騙しやすいとうそぶいていたのが、ヤクザの親分だそうで、金になりそうなヤマッ気(け)のある話しにはすぐ飛びついてくる上に、金融機関などとは違い、一度信用したとなれば、無審査で金を出すのも早い、ヤクザの時間や約束を守る習性をよく知る詐欺師は、あの手この手と利ザヤの出る話しをデッチあげ、金を引き出した後はドロンと消えるのでした。

ただそれも、いきなり金を持ち逃げする様な見え透いたやり口では無く、小さな取り引きを何度か決め、信用をつけ、プライベートの飲食の席さえ共にするなど、しっかり中に入り込んだ上で、よそでは悪さをしてきたかも知れぬが、俺を裏切る事はしないだろうと、そのまさかにつけ込む様に、安心した時を見計らい梯子を外すかの様なそのやり口でもあります。

もっとも…悪党をダマせば相応の報いはあるもので、ダマされた極道も、出した金の帳尻はなんとしても合わせ様と、あらゆるネットワークを駆使してでも詐欺師を捜しだそうとするのですが…

こうした詐欺師もヤクザをカモに出来ていると思っている内が花であり、やがて生活の場を奪われて行きます。
それまでは一流ホテルのラウンジで不動産の話しなどしていたものが、住む場所を転々とし、人目を憚る様になり、やがて詐欺師やペテン師、ブローカーばかりがたむろする喫茶店に入り浸る様になり、結局最後はヤクザに捕まるか、警察の御用になったりするもので…
ただ、こうした不動産や土地に絡むブローカーや詐欺師と言うのは、不動産の登記や様々な法テクに長けているところがあり、金の不始末からヤクザに捕まり、少々痛い思いをしたところで、自分を身売りしてしまう強さがあったりで、したたかな事この上ないものが、その姿にあったものです。笑

話しは変わって…

私が極道当時、知り合いにNと言う男がいました。
この男、私より10歳以上年上だったと記憶しますが、頭もスキンヘッドで貫禄もあり、もうすっかり古いドラマとなってしまいましたが、刑事コジャックと言うドラマに出ていたテリーサバラスにそっくりでもありました。笑

元は関東系組織の傘下組長だったNでしたが、自分の親分が死去した事に伴い、当時、経済ヤクザとしても有名だった関西系列の某組織の幹部として移籍したのでした。

この組の親分は、経済界や実業の世界にブレーンを持つ事でも有名でしたが、癇癪持ちで、若い衆に厳しい事でも有名な方でもありました。(現在は引退、解散)ヤマが悪ければ(機嫌が悪い事の隠語)自分の車を運転する若者を、後部座席から自動車電話の受話器で殴りつけるなど、殴られ意識朦朧となり、事故を起こしそうになる若者の握るハンドルを、助手席から修正するかの様に慌てて手を添える場面があった事など、このNがよく話してくれたものです。
(((;゜д゜)))

豊富な資金力を持つ事で定評のあったこの親分は、移籍してきたNに『おい、Nよ…なんか儲かる話しがあったら、一億まではすぐに出してやるからいつでも言ってこいよ!』と声をかけてきたそうで、移籍早々、親分から嬉しい言葉をかけられ舞い上がってしまったNは、早速土地の売買に関する事で親分から金を借り様と、利益の終始など頭の中で計算し始めたのでした。

ある日、この件をNは組の兄貴分に相談すると…

その言葉が言い終わらぬ内に『それはいいが、お前、金を出してもらって、オヤジ(親分)にはどれだけ礼金つけるつもりなんだよ?』と聞かれ『ええ…一応、元金に一割乗せて返そうと思っていますが…。』と答えたNでしたが…

『甘いなおまえ…一割なんか乗せて返したところで、あのオヤジの腹がふくれると思っているのか?いいかよく聞いとけよ、お前…まだウチに新参で来て事情がわからないから無理もないが、オヤジから金を引っ張る時は、倍返しで金を返せる時でもなけりゃ、間違っても金を借り様なんて思わないこった!オヤジの言う事をまともに聞いてたら地獄を見るぞお前…。』との兄貴分の言葉に…

『ば、ばいがえしですか…?』とその先の言葉を失ったNだったそうです。笑

(((;゜;Д;゜;)))

なんとも、デンジャラスでペナルティの要素の強いアウトレイジな世界の倍返しでありました。

ちなみにこのNの親分だった方、新しい大組織の趨勢から淘汰される様に、堅気になった事などをその後知りましたが、その時『堅気になると今まで寄ってきていた人間も離れ、誰も俺の言う事に耳を貸さなくなった。』と言う意味の事を漏らしていた様で…

そんな無常感もあってか、その後、仏門に入り得度した事など報じられていたものです。

合掌

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