ある寺嫁の告白より

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※写真の実在のモデルと文章は関係ありません。

はいはい動かないの、ちゃんと手をあげてちょうだい!

このお寺の小さなお弟子さんの頭を剃髪するのも、あなたで18人目…

ああ…でも、あなたをお寺に置いて帰ってしまった母親の事をなんてこの子に話せばいいのだろう…

きっと母恋しさに、三日三晩は泣き通すだろうこの子…
毎度の事だけど胸が痛む…

俗な世界で生きていた私が、逃げ込む様に飛び込んだこの寺だった…

人のいい住職の旦那には言えぬ過去が山ほどある。
墓場まで持っていかなければならない事も…

いつも、昼頃に起き出しては夜光虫の様に夜の街を駆け抜けた日々…

そんな私にとって、朝の早い寺の日常は、苦痛以外の何物でもなかった。

ある時、口を開けてお人よしな顔で眠る住職に合掌して、私は寺から逃げ出そうとしたものだ…
(´Q`)。oO

庫裡を出ようと忍び足であるいていると、何かに呼び止められた。

『お母さん…』とその声は呼んでいた。

それはまだ三日前に寺に預けられた子供の寝言…
見ると、親恋しさに泣いたのか、瞼が腫れているこの子の顔を見た時、私はとめどなく涙が溢れたものだ…

その時以来、二度と寺を逃げ出そうと思わなくなった私だった…。

この子達の笑顔に私はどれだけ助けられてきたのだろうか…?

この子達の純粋さに触れるたび、私は自分の卑小さをどれだけ恥じ入ったのだろうか…?

そのままで観音であり菩薩のような子供達…

いたらない私だけど、今日から私をお母さんと思ってね…。

さあ!残りの髪の毛を剃ってしまいましょう…

合掌

by正仙劇場

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