★バリ島のシャーマン②

こうして…バリの有名なシャーマンの元にガイドの方と向かったのですが、その道すがら、ガイドの方が色々と私に話しかけてきます。

自分自身、日本で働いた経験がある事や、バリの歴史文化を事細かに話してくれたのでした。

その話しの中で、印象に残った話しがあります。

それは、バリ島では殺人事件などの凶悪事件が、年間を通して数件しか起きないと云うもので、バリに生きる人々の間には『悪を憎まず』と言う考えが古くから根付いていると言うのです。

この方は、幼少の頃から、この世には善と悪は同じ配分で存在し、バランスが取れているのが良く、どちらが多過ぎても良くないと、親より教えられたと語ってくれました。

我が国でも古くから伝わる陰陽と言う考え方や、正負の法則に相通じるものがあり、私自身共鳴できるものをそこに感じたのです。

善に拘泥し、悪とよばれるものに抵抗し攻撃する時、さらに抵抗するものに力を与える事になってしまうという「皮肉な真理」…

それは国家間の関係や、戦争や民族紛争の歴史にも見られる事でもあります。

私達人間は「正義」と言う言葉にとても弱い生き物だったりもします。

私達は殺人者を嫌い憎みますが、「祖国防衛」や「他国の治安維持」「テロの防止」といった、もっともらしい美名や大義名分がそこにある時、無差別な殺傷を生み出す戦争さえ躊躇なく肯定してしまう弱さがあるのではないでしょうか?

ある左翼出身の作家が言っていた事ですが、「人を一人殺せば殺人者でも、戦場で100人も殺せば英雄扱いされる」と…

痛烈な諷刺でもあります。

私達は何を基準としてそれを『悪』と見なすのか?

そして『正義』とは何なのか?

よくよく自分の考えを見つめ直す必要があるのかも知れません。

政治家が、声高々に我々に訴える言葉が果たして『真実』なのでしょうか?

我々が日常よく目を通す新聞や週刊誌の社説や論評が必ずしも正しい事を掲載しているのでしょうか?

過去には、ドイツのヒトラーの様な巧みな国家が仕組んだプロパガンダ(情報操作)と巧みな弁舌により、ドイツ国民の集合意識を洗脳操作したモンスターの歴史もあります。

新聞や週刊誌にしても、編集をしている出版社の意向や、その裏に政治的に意図されたものを感じる事が多く…

それだけが理由ではありませんが、私は最近は殆どTVも見ません。

昨今、世界的に見て日本の子供の知的水準の低下が叫ばれていますが、テレビの番組表をみれば、夜のゴールデンタイムなどにはお笑い番組ばかりが目白押しで、こうした番組ばかり見て育つ、子供にどの様な影響が出るのでしょうか?

また、こうした番組ばかり見て育つ子供の情操観念に、どの様な影響を及ぼすのでしょうか?

人間見るものによる潜在意識への『刷り込み』ははかり知れないものがあったりします。

親からは蝶よ花よと育てられ、子供の頃からケンカのひとつした事もなく、人を殴る痛みも、殴られる痛みも知る事もなく育った人間でも…

バーチャルな世界、プレイステーションやTVゲームの中では、機関銃で人を殺す事も、女性をレイプする事も出来てしまうのです。

ケンカをした事もなければ、傷つく事を恐れ、生の感情のぶつけ合いさえ経験せずに育つ子供が、自分が子供の頃に受けた他者からのイジメや不当に扱われた経験を持ち越してしまい…

自分が社会に出てより、初めて女性にアプローチして手痛いシッペ返しを喰った時、会社の上司から手酷い叱責を受けた時等に…

自分の中にしっかりと根を降ろし、刷り込まれている、心の絵とでも言うべき、バーチャルな残酷な画像に…潜在意識がリンクし…

ある種の衝動を引き起こし、自分勝手はなはだしい無機質な恐ろしい暴力や復讐劇の原因になってしまう事もあり得るのではないでしょうか?

話しがだいぶそれましたが…笑

こうして約1時間のドライブの末、私はシャーマンの自宅に到着したのでした。

【つづく】

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